使いたい色に合わせて、色インクを混色し、用意します。



このやり方では色版から墨版まで、一気に刷り上げてしまう方法をとっています。
刷っている間は紙が乾燥してはいけませんので、刷りの前最初に、全部の版を拭き上げてしまいます。拭き方は基本の刷りと同じです。色版1版に2〜3色つかう詰め分けをやりたい方は、綿棒などを用意して、色が混ざらないように拭き上げます。
このように、すべての版を一気に刷る方法以外に、色版だけ刷って、いったんインクをある程度乾かし、紙を湿し直して墨版を刷る方法が考えられます。。
右の写真の作例は、3版4色刷りで、3版を一気に拭き、一気に刷り上げる方法をとっています。
青の版、黄色の版、墨の版にインクを詰めて拭き上げます。
ベッドプレートには版のサイズ、紙のサイズ、見当の中心線などをかいた見当フィルムを置いておきます。この写真では、プレスに1ミリ圧の透明な塩ビ板を置いて、その下に見当の紙を挟んであります。
その見当の上に、だいたい版が紙の中央にくるように、紙をセットします。
ここまでの過程も、基本の刷りと全く同じです。
この見当合わせのやり方では、紙は色版、墨版と刷り重ねていく時に、けっしてプレスのローラーから完全に抜いてはいけません。
紙は常にプレスに端っこをかませたまま、版を交換して刷っていきます。
つまり、紙の位置は刷っている間、常に同じ位置にある、という理屈ですね。
刷りはじめるときも、まず紙の端っこをローラーにかませておいて、1版目の版をベッドプレートにセットします。

見当フィルムの中心線が、ぴったり銅版のプレートマークの点4つにあうよう、慎重に版をセットします。(4点見当)
刷る版の順番は、一般的には薄い色から刷り重ね、決定的な墨版は一番最後というのが普通です。
右の作例では、青の上に黄を刷り重ねて緑色に色を変化させたいので、最初に青、次に黄の版を刷り重ねます。



刷る紙によっては、色版を刷る時に若干圧を緩めにしておくと、墨版の時に完全に紙の目がつぶれて、刷りが悪くなるのを防ぐ事ができます。ベラン・アルシュのような強靭な紙は必要ありませんが、ハーネミューレのように柔らかめの紙に刷る時は、少し緩めの圧で色版を刷ったほうが良いかも知れません。
ゆっくりとプレスを回し、色版を刷り上げます。この時いつものように、プレスを端まで回しきってはいけません。紙の端っこがプレスにかんで動かない位まで回します。
プレスが銅版の上からおりるときハンドルを回す手に手ごたえを感じますから、銅版からローラーがおりた少し位の所で回す手を止めましょう。
フェルトをローラーに巻き付けるようにして上げ、紙がちゃんとローラーにかんでいるかどうか確認したうえで、紙をローラーに巻き上げます。そして、版をベットプレートからはずします。
色版が2枚なら、また2枚目の銅版をセット。そして、今度は逆向きにプレスを回し刷っていきます。
色版が3枚なら、同じことを3回繰り返します。







2版の版画なら、プレスは1往復、3版の版画なら、プレスは1往復半移動することになります。
プレスを回すときは、1版の版画の時より慎重に、ゆっくりと回すようにしましょう。どうしても紙がプレスされている間伸びたりゆがんだり、しわが出来やすい状態になっているからです。ゆっくりプレスを回すことによって、しわなどのトラブルを回避できます。
刷り終ったら、基本の刷りと同じく、水張り。感動の一瞬ですね〜〜


色版をいったん乾かしてから、墨版を刷り重ねる場合です。
D-2.見当の付け方で解説したように、いったん刷り紙をプレスから外すので、あとで墨版にぴったり合わせるための見当をつけておく必要があります。
1,2版目だけ刷ったあとに、プレスの上の刷り紙の裏に、銅版プレスの上にある見当の印をつけておきます。
この後、色インクが乾いたら、もう一度紙を湿し直して墨版を刷ります。
色インクは、大体2,3日〜1週間くらいで乾きます。
インクが生乾きの時に紙を湿し直して刷ると、刷り紙のインクが墨版にくっついて、紙が破れてしまう事があります。版によって色インクが分厚く紙に乗っている、薄く乗っているなどなど差がありますので、注意が必要です。
さて。最後の過程まで、きっちょりと作業した。トレースも正確に、見当もしっかり付けた。刷るときにも、版を正確に合わせた。
・・・なのに、刷り上がりを見ると、版ズレを起こしてる!なぜえ〜〜!! という事が必ずや起こると思います(笑)
版ズレ。これはある程度銅版画の宿命・・・・と言えるかもしれません。
銅版画は他の版種とは比べようもない程強いプレス圧で刷ります。しかも、紙を湿した状態で刷るわけですから、当然かなり紙が伸びます。小作品などではさほど気になりませんが、大作ほど紙の伸び率が大きくなるので、ズレが目立ちます。紙の種類にもよりますが、特に伸び率の大きいベランアルシュなどを使うと、大きな作品では全体で五ミリ位伸びちゃったりします。
また、銅版プレスはローラーを中心にベッドプレートが往復する形になっています。これも、ズレの原因になります。なぜなら、どうしても最初の1版目を刷るときに、紙はたくさん伸びてしまい、2版目からは緩やかにしか伸びないからです。1版目を刷るときに作品の上方向からプレスされるわけですから、紙は作品の下方向に向かって大いに伸びます。
しかし、2版目、逆向きにプレスされた時は、1回目のプレスの時程紙は伸びないわけですから、上下でズレを生じてしまうわけです。
その他、ここで説明したような、紙をプレスにはさんだまま刷り上げる方法だと、理論的には紙の位置は変化しないはずなのですが、実際にはプレスの鉄板の歪み・左右のローラーの圧の微妙な差などがあり、プレスを往復させているうちに紙も多少動いている事があります。
そしてそして!!ここで説明しているように真ん中で見当を合わせるやりかただと、どうしても画面の中央はぴったりあっても、画面の端っこに来るほどズレが生じます。たとえばもし、版の右下で見当を合わせたとしたら、右下はぴったりあっても、画面の左上にくるほどズレが生じる・・・ということになるはずです。
だったら最初に版をつくるときから、紙の伸びを計算に入れて製版すりゃいいだろう、と思うかもしれませんが、紙の伸びというのも、刷るときの紙の湿し・プレス圧なんかで微妙に変化します。そこまで計算に入れて製版する・・・というのは超人技ですね〜。
さてさて、うまくいかない話ばかり書き連ねましたが、実際に多色刷りをやってみると、そんなにズレのことばかり気になるわけではないです。要は、絵が良きゃいいわけです。(笑)たとえズレを生じていても、目立たなきゃいいわけですよね。
ただ、私の経験上、なるべく版ズレを生じないよう刷るための秘訣がいくつかあります。・・・て偉そうに言うほどのモノでもないのですが、それをいくつか御紹介します。
こういったことに気をつけていれば、「1ミリのズレも許せねえ!」という完ぺき主義の方でなければ、色版づくりはそんなに難しいものではないので、ぜひトライしてみてくださいね。