リトグラフ
リトグラフってなに?
銅版画はへこんだ所にインクを詰めて刷る。
というふうに、比較的感覚として分かりやすいのですが、「リトグラフ」は少々分かりにくい技法です。
そもそも、「リトグラフ」の語源は「リト」=石、の意味だったのですが、
最近では石を使わずにアルミ版などを使うケースが多いので、
「リトグラフ」という名称ではありますが版材は多種多様です。
また、リトグラフは「平版」とも言われますが、
平らな版でどうして版画が刷れるのか・・・・???
原理は版画全般で説明しましたが、理屈はわかっても、
感覚的に把握しづらいのがこの「リトグラフ」という技法の難しさです。
でも、版画の中でリトグラフは最も自由な表現の出来る技法なのです。
ぜひリトグラフの技法を理解して、作品鑑賞の助けとして下さい。
このページでは、
リトグラフ=平版
「水と油の反発を利用して(または他の方法で)平らな版で刷る版画」
と定義づけて、リトグラフに使われる版材料のわけ方によって、色々な技法を説明していきたいと思います。
リトグラフに使われる版の材料
■ 石
リトグラフはそもそも石を使った技法でした。
それで、いまだにリトグラフの事を「石版画」と訳すケースが多いのです。
現在市販されている「リトグラフ用プレス機」も、「金盤」と呼ばれる部分は石の厚を模しているのです。つまり昔、石をプレスしていた痕跡、というわけです。
石をリトグラフに使うには、まず石(ヨーロッパ産の石灰岩)に、「金剛砂(こんごうしゃ)」という細かい砂の粒々をまき、平らな金属の板をすりあわせるようにして、石に細かい砂目を立てます。
砂目を立てることによって、上にクレヨンや解墨で描画しやすくすると共に、スポンジで水を引いたときに水になじみやすく、すぐに蒸発してしまわないようにします。
描画する材料は「油性のもの」というのが原則です。
これは、リトグラフの原理=水と油の反発を利用して刷る、を理解していれば当然ですネ。
また、鉄筆(銅版で使うニードル、ポイントなど)で、黒い部分を削ったりすることも出来ます。
石を使ったリトグラフは、インクの乗りが大変良く、刷り上がりもそれに比例して細かい調子からベタの調子まで美しく刷ることができます。
ただ、石は重く、持ち運びに不便なこと、高価なことなどがあり、現在ではあまり気軽に使えるシロモノではありません。
多くの作家がアルミ版などその他の材料を使うようになっています。
リトグラフ用の石。
重く厚みがある
プレス機の金盤の部分。
石の厚みを模している。
■アルミ版
現在リトグラフと言えばアルミ版を使うのが一般的です。
もともと印刷の世界でも20世紀前半までは石を使っていたのが、石からジンク版へ、ジンク版からアルミ版へと変化していきました。
その流れが、リトグラフという美術版画にも影響を与えたと言えるでしょう。
たとえば、10色の色彩リトグラフを作る作家は、石のリトグラフであれば10個の石を使うことになります。これは、ちょっと考えただけでも、大変な労力と手間ですね。
アルミ版であれば、何枚か束ねてもそれほど場所もとらず、重さもたいしたことはありません。
このような理由から、アルミ版は現在最も普及している版材料となりました。
美術学校などでも、リトグラフと言えばアルミ版を使う所が大半です。最初からリトグラフ用に砂目を立てたものが材料店で入手できます。
アルミ版のリトグラフの色々な技法については、アルミ版のリトグラフで詳しい説明があります。
■ジンク版
印刷で石からジンク版、アルミ版へと変化していった歴史から、リトグラフでもジンク版を使う作家がいます。
ジンク版は、解墨などの調子がアルミ版に比べて斑点状の文様になり、特徴あるトーンになるのが特徴です。