右の作品のように、台紙は白い色なのに、画面の部分だけ和紙のうっすら黄色い色に刷り上がっている銅版画の作品を見たことがありませんか?
これが「雁皮刷り」という方法によって刷られた作品なのです。
雁皮刷りのメリットは、主に
特に、アクアチントやメゾチントなどの調子は非常に細かく刷ることができる。
特に白黒の銅版画作品の場合、台紙の白、インクの黒の他に雁皮の色が一色加わることによって作品に膨らみが出る。
・・・・等々があります。
銅版画という西洋の技法に、日本特有の文化・和紙を使うのは大変オモシロイですね。日本の銅版画の作家は、多くがこの「雁皮刷り」を使っています。

雁皮はちり紙のように薄いため、雁皮だけ単独では使用せず、台紙(基本の刷りで使う、アルシュ、ハーネミューレなど)に糊で貼り込みます。
この貼り込みと刷りとを別々に行うと面倒くさいので、(^^;)同時に行います。
「雁皮刷り」とは、刷りと貼り込みを一度の工程でやる方法なのです。
銅版の上に雁皮紙をのせます。
雁皮は薄いので銅版が透けて見えますね。
銅版のプレートマークの内側、画面サイズを鉛筆で印をつけて、雁皮を切ります。
基本の刷りの、「紙を切る」から「プレートマークを拭く」までと同じように、紙(台紙)を湿してプレス機を準備し、銅版にインクを詰め拭き上げます。
大変薄いうえに、雁皮は水気で少し伸びますので、台紙に貼り込むため糊をつけたとき、しわになったりよれたりする、ってことで、大変厄介です。
いったんよれてしまったら、あきらめて雁皮を丸めて捨てるしか無いです。
ちり紙を濡らした状態を想像すればわかりますよね。
そこで、あらかじめ雁皮を湿して伸ばしておいて、かつ、銅版に水でぴったりくっつけておけば作業が楽。
そういう理由から、水を張ったバットに銅版を入れ、雁皮をその上に浮かせて銅版ですくいとる・・・・・
という大変手のこんだ事をやります(笑)

仕上げ拭き、プレートマーク拭きを終えた銅版を水を張ったバットに入れます。
つるつるした面が表、ざらざらした面が裏です。
モチロン、銅版に向かった面を表にするんですヨ!(よく間違えるかも・・・)
表を下にして雁皮を静かに水に浮かせます。
この時雁皮を水に沈めてしまうと、とーーーっても厄介な事になります。
落ち着いて、心静かにそおっと作業しましょう。
浮いている雁皮を水に沈めてしまわないよう注意して、銅版で雁皮をすくい取ります。
この時、銅版の方から雁皮を迎えに行く・・・ようなキモチで作業すると案外うまくいきます。
水が雁皮と銅版の間に入り込んでいるので、多少の雁皮の位置のずれなどは後からでも少しは修正が効きます。
この段階では雁皮が銅版からはみ出ないように注意する程度でOK!とにかく雁皮が折れたりよれたりしないように全神経を集中しましょう。
雁皮が、プレートマークの内側にぴったり来るようにここで微調節します。
真ん中から外側へ、雁皮と銅版の間にある水を追い出すと共に、余分な水気を拭き取ります。
これで雁皮は水で銅版の表面にぴたっとくっついて動かなくなりました。
ヤマトのりを水で少し薄めて、刷毛でスムーズに塗れる程度の粘度にします。
雁皮に糊を塗りますが、この時真ん中から外側へ、放射線状に塗っていくように。
乱暴にやると雁皮の端っこがめくれたりするので、ここでもあくまで静かにていねいに。
ウエスで糊を拭き取りますが、この拭き取り具合いかんで、台紙に雁皮が無事くっつくかどうか決まります。
「びしょびしょ」が「ぺたぺた」・・・といった感触になったらできあがり!
・・・と口で説明しても良くわかりませんね。こればっかりは実際に作業して、何度か失敗と成功を経験してみないとわからないです。
糊を拭き取ったらやっと完成!
長ーーーーい道のりでした.
後は基本の刷りの「刷り」の項目からと同じく、台紙をセットしてプレスするだけ!
・・・等々の理由が考えられます。
また、ベランアルシュは紙が強靱すぎて雁皮が付きにくいので、初めての人はハーネミューレを使ってみるといいでしょう。
プロセスを見ていると、何だかとても難しそうに思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
「面倒くさい」ことは確かですけれど(笑)
雁皮は「色雁皮」など、キレイな色に染められたものもあるので、画面全体に貼り込むだけでなく部分的に貼り込んだりしてもオモシロイ効果がでます。
また、応用編として、プレーンな生成りの雁皮紙と台紙の間に、色雁皮や、版画用ではなくても和紙、色紙、英字新聞などを挟み込んで一版多色刷りとして刷る方法もあります。
詳しくはこちら[1版多色刷りのいろいろ]をご覧下さい。